歯医者として患者さまのお口の中を診ていると、数々のお口の不思議に出会います。医療の進歩で理由が明らかなものもあれば、いまだ謎が解明されていないものもあります。今日は、歯科医院で度々みられる謎の一つ、私たち人間の歯の数についてお話ししたいと思います。
成人の永久歯は、上下左右合わせて28本が標準です。上14本、下14本ですね。
しかし、28本ではない患者さまに出会うことは珍しくありません。むし歯などで、抜歯になったからではありませんよ。よくあるのはいわゆる親不知(おやしらず)ですね。4本ある方もいれば、1本もない方もいます。ここまでは、「そんなの知っているよ」という話かと思います。
では、過剰歯や先天性欠損歯というのはご存じでしょうか。
過剰歯は必要以上にある歯のこと。親不知は永久歯と捉えられますので、過剰歯ではありません。過剰歯は、歯列にそって永久歯の後方にあるとは限らず、親不知の上や乳歯の下などどこにあっても不思議ではありません。上あごの前歯の間は、比較的多くの症例があります。
過剰歯は、歯として機能できないことがほとんどで、歯列やかみ合わせなどに悪影響があるとして抜歯対象になることが多くあります。表に出てくる場合は、乳歯から永久歯への生え変わり時期に発見されることが多いようですが、むし歯などもなく歯科医院と縁遠かった人は埋没したまま気づかないこともあります。
先天性欠損歯は、本来あるべき歯がないケースです。本来、乳歯の下には永久歯が用意されていますが、先天性欠損歯ではその永久歯がありません。乳歯がいつまでたっても生え変わらなかったり、乳歯が抜けてもずっと永久歯が生えてこなかったりする場合は、欠損が疑われます。
このような過剰歯や先天性欠損歯は、これといった違和感も起こりにくく、患者さま自身が気づくのは難しいものです。歯科医院でもレントゲンを撮らないと、明確な診断はできません。
しかし、これらは歯列の乱れや数々のお口のトラブルの原因となることもあります。先天性欠損歯の場合は、早期の矯正できれいなかみ合わせを手に入れることができる場合もあります。歯の本数の異常は、近年増えてきているともいわれています。もし、お口の中のことでちょっとでもひっかかることがありましたら、歯科医院でおたずねください。