歯並びを整える、歯列矯正という方法をきいたことがある方も多いことでしょう。今回は、歯列矯正は見た目を整えるだけでなく、将来の健康を守ることにつながる大切なことであることをお伝えしたいと思います。
歯列矯正が浸透している欧米に比べると、まだまだ日本は歯列の乱れをそのままにしてしまう傾向があります。歯列矯正に対するマイナスイメージもあるようですが、日本では歯列の乱れにより不快な思いをすることが少ないという、文化的な傾向も原因の一つだと感じます。
ここで、皆さんに知ってほしいのは、歯列矯正が単なる見た目の問題を解決するにとどまらないこと。見た目をよくするために歯列矯正が必要と思っているかもしれませんが、歯列の乱れに起因する将来のリスクを予防するという点からも大切なことです。
歯列の乱れを歯の機能という点から見ると、しっかり噛めないという噛み合わせの問題があります。噛み合わせが悪いとあごに負担をかけ、顎関節症の原因となります。あごへの負担は体のゆがみにもつながり、肩こり・腰痛・頭痛をも招くことがあります。
消化を担う胃腸にも負担をかけてしまいます。下痢がちになったり、近年増えている過敏性腸症候群を悪化させてしまったりすることがあります。よく噛めないことで満腹感が得られにくいことは、肥満につながります。子どもの場合は、将来の生活習慣病リスクが高くなってしまいます。歯列矯正は、これらの予防につながります。
そして、歯列の乱れは毎日の磨き残しにつながり、これがむし歯リスクだけでなく歯周病リスクを高めてしまいます。歯周病は、高齢者が歯を失う原因の1位となっている病。歯周病は心疾患発症リスクを高め、高齢者の死因ともなる誤嚥性肺炎の原因ともなります。
歯列の乱れが将来の病につながり、さらに命の危険につながるとは、大げさに聞こえるかもしれません。しかし、世界的な長寿国において歯列矯正が将来の健康を守り、健康寿命を延ばせる可能性があることは知っておきたいところです。
歯列矯正は今日、明日でできるものではありません。数ヶ月、数年といった時間が必要です。歯列矯正は早めに歯科医院にご相談ください。